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前日の晩には

 いよいよコンペが明日に迫ってくると、皆が思うことは如何にぐっすり寝て、良いコンディションで明日のプレーに臨むかと言うことである。 特に翌日の朝に家を出る時間が早ければ早いほどその思いが強くなる。 ところが、自分の思いをよそに、退社後、夜の町への誘いが来たり、歓迎会などの公式行事があったりで案外帰宅が遅くなったりする。 しかも二日酔い必至の状態である。 こんなことが嫌で、みんなを振りきって早帰りするほど意志の固いサラリーマンなんていないのである。

 それからこんなこともある。 はやばやと寝床に潜り込んだのはいいが、子供の遠足と一緒で興奮してなかなか眠りにつけない。 早く寝なくてはと思えば思うほど目が冴えて、自分が明日打つであろうティーショットやパッティングの場面がちらついて眠れない。 逆に、お酒の勢いを借りて寝付いたは良いが、夜中の3時や4時に目が覚めて、それからどうしても眠れず、悶々としている内に夜が白々と明けていく。 ああ、眠れなかったなと嘆き、もう今日はだめだとあきらめの心境になる。

 ことほど左様に前の晩を理想的に過ごすことは難しい。 私の場合も前の晩は良く悶々と過ごしていたが、バルセロナオリンピックのマラソンで銀メダルを取った有森裕子の談話を聞いてから、少しは眠りについてのプレッシャーから解放されたような気がする。 有森選手はレースの前の日、早々とベッドについたという。 翌日のレース開始は朝8時だったかの早い時間であったので、起床時間は確か夜中の3時に決められていた。 有森選手は、しかし、一睡も出来ない内にその起床時間を迎えてしまったのである。 それなのに、暑い暑いレースで一時はトップに立つほどの検討を見せ、見事銀メダルに輝いたのである。 自分をほめたくなるのも無理はない(これはアトランタ?)。

 要するに、あの過酷な夏場のマラソンでさえ寝なくても活躍できたのである。 ゴルフをワンラウンド回るくらいなら、なおさら寝ないでもすむはずであり、1,2時間でも寝られれば御の字である。 こう考えると、眠れない眠れないと悩む必要が無くなり、かえっていつの間にか熟睡してしまうことになる。 私は、早く目覚めてしまった場合にも、決めた時間までは寝床を離れずに目をつむっていることにしている。 眠れなくてもいいからと思っている内に、いつの間にか眠ってしまっていることが多い。 それから、プレー直前に熟睡するのは身体が眠ってしまうので良くないようだ。 ゴルフ場に電車で向かう場合などに目的駅に着くまで熟睡し、迎えのバスで眠り足してプレーを開始してさんざんな目にあった経験からしても、確かだと思う。

 結論として、前の晩は眠れなければ眠らなくてもいい位の気持ちで、必要ならお酒のつきあいも果たし、いつものように過ごすことが良いのでは無かろうか。 このようなおおらかな気分で前の晩を過ごせるようになれば、あなたの優勝も間近である。


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