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はじめの3ホール(人の振り見て我が振り直せ)

 私がコンペに参加し始めて間もないころ、R&D関係の20-30人規模のコンペに参加した。 まだまだ注目されるような実力ではなかったが、部分的な人たちには多少下馬評に上がっていた。 私としても、ハンディキャップがまだ27位であったから、ひそかに期するものがあったのは事実である。 練習にもかなり力を入れたし、自分なりに調子も上向いているように思えた。
 ところが、いざスタートしてみるとボールがまともにクラブに当たらない。 スタート第1打ちょろ、2打目スプーンもちょろ、といった調子でスタートホールトリプル。 2ホール目も3ホール目も同様でダボ、ダボ。 同パーティで私に投資している先輩が嘆くことしきりである。

 しかし、3ホール目の途中で、大げさに言えば私のゴルフ人生の中で最も印象に残るショットのひとつが生まれたのである。 そのホールでも私のショットは定まらず、右へ、左へちょろちょろしていた。 ミドルホールで3打終えてもグリーンまでまだ180ヤードぐらいある。 そこへ、大先輩のボールも飛んできて、彼が私より先に打つことになった。 ここまで、自分のショットに夢中になっていて、人のショットなど目にも入らなかったのが、たまたま自分の打順を待つことになり、この先輩のショットを見ることになったのが大きな転機になった。

 先輩のスイングはゴルフを始めて間もない私にもはっきり分かるぐらいひどいもので、典型的な頭がスイングする振り方から見事なちょろを発生させた。 これだっ! 声には出さないけれど、私は胸の中で叫んだような気がする。 私のこれまでの振り方もこれだったに違いない。

 残り180ヤード。 そのころの私にはアイアンで届く距離ではない。 スプーンを手にする。 打つ前からなんとなく自信が戻ってきていた。 頭を残すのだ。 それ一点に集中する。 振り抜いたクラブにいい感触が残る。 花道が開いていたことも幸運であった。 見事な軌跡を残しボールはグリーンにかけ上った。
 そのホールをダボでしのいだ私は、その後、練習場でも見られないような好ショットを連発し(と言ってもその頃にしては)、コンペ初優勝を飾ったのであった。 今もって忘れられない一打である。

 それからも、人のスイングを見て自分のスイングを矯正し、立ち直ったことが幾度もある。 特に、最初の3ホールは心がけが重要であり、調子が出ないときは他の人の良いスイング、悪いスイングを見て、早めの立ち直りを図ることである。 その日のプレイを後悔なしに終えるには、できるだけ早めに調整するに越したことはない。

 良く練習したはずなのに、どうも調子が出ない。 自分の殻の中だけで悩まないことである。 いつもの仲間が一緒なら、そっと聞いてみることもいいかも知れない。 しかし、人の言葉と言うのは必ずしも適切でないことが多い。 やはり、自分で気がつくしかない。 それには、人の振りを見ることである。 そこに何らかのヒントが見つかればしめたものである。 特に、スタートからの3ホールで気がつき、後はいつもの良い状態に戻って、すいすいと回る。 なんてことができるようになれば、あなたの優勝も間近である。


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