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私のスイング矯正法

1)グリップ
 この項のグリップは、矯正法というよりは、むしろ基本ともいうべきかも知れない。 すべてのスイングは、正しいグリップの上に成り立っているのではなかろうか。 自分の握りやすい握り方がベストだとは思ってはいけない。 悪い癖は、一日も早く直して、正しいグリップで握る癖を付けなければ、いつまでたっても正しいスイングはできないと思う。
 私も初めのころは、右手の甲が下に向くぐらいの極端なフックグリップであった。 おそらく、スライスが怖くて引っ掛けるようにボールを打っていたのだと思う。 そのくせ今思うと、左手の握り方は浅かったように思う。 あるとき、練習場で、ある決して上手ではないが、手引き本をよく読んでいて理論だけは卓越した先輩から、「君の左手の握り方は浅すぎるよ」と注意を受けたことがある。 左手は、親指と人差し指の間にできる線が右肩をさすくらいかぶせて握るほうがいいと言うのだ。 右手は、と言うと、こちらは左手に添えるようにもっと浅く軽く握り、しかも、親指と人差し指は緩めないようにしっかり添えること。 先輩の指示は明快であった。
 しかし、一度ついた癖はそう簡単に直せるものではない。 しかも、教えてくれた人の打つ打球を見る限り、信用して良いものやら、、、と言う気もあってそのままになっていたある日、ボーっと見ていたTV番組で、ゴルフのレッスンプロがアマの初心者にまったく同じことを言ってクラブの握り方を教えているのを見て、思わず立ち上がってしまうほどのショックを受けた。 たしかに、教則本を読み直してみるとそんなことが書いてある。 それからと言うものは、とにかく集中して正しいと思われる握り方で、ボールを打つ練習に明け暮れた。 ゴルフショップに行って握り棒を買ってきて四六時中握り締めたりもした。 練習場では、たとえうまくボールに当たらなくてもグリップだけは変えないで打つ練習をした。 そして、この過程で、スイング全体も様になっていったように思う。
 かの先輩の助言がなかったら、TV番組も無意識のうちに見過ごしていたかもしれない。 後に、先輩がブービーで私が優勝と言うようなこともあったように思うが、私が数多く受けた助言のうちで最も印象に残っているのがこの助言である。

2)右スエー
 私の最初のころのスイングは、クラブを思い切り引き上げる際に、左足のかかとを大きく浮かせ、右足踏ん張りなしで身体を右にスエー、クラブヘッドが左に見えるぐらいにオーバースイング。 これでも何とか飛ばせるのだからゴルフは面白い。 しかし、これでは方向性が定まらないのと、飛距離もたいしてでない。 しっかりとしたヒッティングができないのである。
 コンペ前の練習場で、私の問題外の打ち方を見て、大先輩が近づいてきた。 この方は、経験豊かで実力も相当なものである。 「そんなにかかとを上げると、おろしたときに違う場所になったりして踏ん張りが利かなくなる恐れがあるよ」とだけ言って自分の打席に帰ってしまった。 そのときは、その真意がわからず「おろした時に足の位置がずれるはずがないだろ」ぐらいの捕らえ方であったように記憶している。
 ショットが思うようにいかないと、さすがの私も右にスエーしてるんだなと自覚するようになった。 そこで私なりに考えた矯正法は、思い切りひざを曲げ、ひざ小僧はなるべく前に出ないようにし、いすに座るような感じでクラブを振る。 このとき、ボールを打つと自然にもとの状態に戻ってしまうので、ボールを打たずに力を抜いてゆっくり素振りをする。 両足はべた足である。 ひざは伸びないように、トップでは体重を右足裏の内側で支えるような感覚で身体をねじる。 見ている人がいたら、気ちがいだと思われるように一心不乱でこれを続ける。 そして、最後にだんだんひざを伸ばしてゆき、若干曲げた状態でゆっくりボールを打つ。 矯正中なのだから、軽く、飛ばそうとせず、軸が動かないようにクラブを振る。
 頭の位置も気になるところである。 あまり右にずれないほうがいいように思う。 夜、人通りが少なくなった通りにクラブを持って出る。 街灯のある所で、街灯を背にクラブを構える。 頭の影が何か目印のある位置に重なるように立ち、素振りをする。 目印から頭の位置が大きく右にずれるようであれば要注意である。 最初は窮屈に感じるスイングが、だんだん身につくようになれば大進歩である。 ただし、この行為は、近所の人から気違い扱いにされることを覚悟する必要があるだろう。

3)オーバースイング
 初心者の大部分はオーバースイングになりがちである。 特に女性は身体が柔らかいこともあり極端なオーバースイングになる。 かつて一流プロだったジョンデイリーだってものすごいオーバースイングじゃないかと言う人がいるかもしれない。 でも私は、彼にしろ、横峯さくらにしろ、もしオーバースイングでなかったらもっと優れたプロになると信じてやまない。 オーバースイングの良し悪しは他の手引書に譲るとして、私の矯正法を述べたい。
 5番アイアンを手にし、ハンドファーストに構える。 右手とクラブがひらがなのくの字を描くようにし、クラブと左手はほぼ直線になるように構える。 ここから、クラブと手の位置関係がそのままの状態で振り上げる。 決して力を入れず、ゆっくりバックスイングを取る。 トップでもこの位置関係を保ち、腕をしならせないような感覚でぴたっと止めるようにし、左グリップが絶対に緩まないように握り締める。 身体が十分ねじれたらダウンスイングに移る。 この感じで、何度も何度もボールを打つ。 飛ばそうとせず、しっかりボールを捉える感覚が必要である。

 以上が、今思いつく私のスイング矯正法であるが、私がスイングを見つめなおそうと思うきっかけとなったひとつの出来事を最後に付け加えたい。 広島カントリークラブ八本松コースは数々のプロトーナメントを開催してきた名門コースであるが、ここで開かれた女子プロのトーナメントを見に行ったことがある。 まだ岡本綾子が売り出しのころである。 各女子プロのスイング、特にティーショットを見ていると、いつも回っている仲間のスイングと何か違うと言うことに気がついた。 女子プロに共通して身についているスイングが我々のそれと違うのである。 その日むさぼるように見つめた女子プロのスイングから感じ取ったものとは、トップスイングの決まり方がしっかりしていること、そこからワンピースでクラブが振りぬかれ、そるように身体が前方に突き出されたフォーローへとつながる。 とにかく美しい。 もちろんなかには独特のスイングをするプロもいた。 しかし、その人でさえ、トップの決まり方はしっかりしている。 別項で述べた左の壁がしっかりしたスイングができる体勢なのだ。 その頃は、いろんなことがまだ十分理解できていなかったが、彼女らのスイングをイメージしてフォローが華麗に収まるようにするにはどうしたらよいかを考えながら練習に励んだことを覚えている。


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