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ミドルアイアンは意外に苦戦する

 ミドルアイアンって何番から何番? あるゴルフクラブ店のWebページでは、5,6番がミドルで3,4番がロングと言うことになっていたが、はっきりした定義があるのかどうか私は知らない。 人によっては、4番なんかミドルだよと言うかもしれないし、7番ってミドルじゃないのって言う人がいるかもしれない。 人によって捉え方が違ってもいいのではなかろうか。

 私がゴルフの練習場に初めていって、手にしたクラブは5番アイアンである。 先輩がこのあたりから練習したらと勧めてくれたからである。 5番アイアンから練習を始めることの是非はともかく、それからしばらく私は5番アイアンを手にして、ゴルフと言うものとの格闘に明け暮れた。 このクラブを克服しない限り、ゴルフは克服できないとの意気込みである。 もっとも、30年以上経った今もって克服できないでいることなどその当時は想像もしていなかったに違いない。

 したがってめでたく筆おろしの日を迎えたときも、5番アイアンが頼りと言う状態で、何でもかんでも5番アイアンを振り回して回ったことを覚えている。 その後も、そのコースでよくラウンドしたが、めったにのらない長めのショートホールで、筆おろしの日にはこの5番で1.5m位につけたのであるから驚きである。

 そんなに信頼厚き5番アイアンであったが、経験を積むにしたがって、とても信頼を置けるような状態ではなくなった。 初めの頃は、全てがひどいショットであったから、その中では5番アイアンが信頼できるクラブであったのが、経験を積むにしたがって、グリーンに乗せなければと思って振る5番アイアンのショットが結構難しいことに気がついたと言うのが本当のところだろう。 比較的振りやすいクラブであると言うことは間違いないと思うが、その割には結果が伴わないのである。

 ミドルアイアンの場合の難しさは、距離が結構出るクラブであると言うことにある。 また、どうしてもショートアイアンに比べてフルスイングで力を入れて打つことになる。 さらに、アドレスして構えたときにクラブヘッドが小さく見え、調子の出ていないときなどはなんとなく不安が付きまとうスイングになりかねない。 したがって、ミスする確立が増えると同時に、ミスした時のペナルティーが大きくなる。 右に大きくふけてバンカーへ、左に大きく引っ掛けて深いラフへ。 そして最も多いのが、あたり損ねの距離足らずである。 誰しもナイスショットしたときの番手を手にすることになるから、ミスすると距離が足らなくなるのである。 かといって、大きめのクラブを持つと調整気味のスイングになってこれまたミスとなり易い。

 ミスの話ばかり書いたが、ミドルアイアンではもちろん良いショットも結構ある。 ロングアイアンのように、はなからナイスショットが出る確率が低いと悟って打つクラブと違って、一応成功を頭で描きながら振るクラブである。 しかし、うまくいっている内は良いが、ひとたびミスが重なると不安になると言う、技術的難易の、あるいは、成否のボーダーラインに位置づけられるクラブではなかろうか。 したがって、いいときがあると思えば、悪いときが当然のように押しかけてくる。 ミドルアイアンで苦戦するのはこういうところから来るのであろう。

 プロの選手のプレーをトーナメント観戦などで間近に見る機会があると、ミドルアイアンのショットで力強いインパクトから信じられないような距離を飛ばすのに驚かされるが、そのスイングと言うものは必ずしも思いっきり振っているという印象は受けない。 ドライバーのティーショットで身体全体を使っているような印象を受ける尾崎直道選手ですら、ミドルアイアンではコンパクトなスイングをしているように見える。 どうも我々のミドルアイアンのショットは、大きくなり過ぎているのではなかろうか。 グリーンを狙うとき、十分届くはずの番手を手にしたつもりなのに、アドレスになると「この番手で届かせるにはいい当たりをしないと」と言う思いがふとよぎって必要以上に大きなスイングになっているのではなかろうか。 大きすぎるスイングからのミスショットは、ペナルティーが大きい。 苦戦の原因はここにあるのかも知れない。

 さて皆さんは、キャディさんから「何番にしますか?」と聞かれて、ほかの人に聞かれていることを意識して、5番にしようかと思っていても、つい、「6番」と答えてしまうようなことはないだろうか。 特に距離の出る人と回っているときなんかに、張らないでもいい見栄を張ってしまう。 こんなときは、キャディーさんから聞かれる前に、2,3本のクラブを手にしてボールのそばに行き、散々迷っている振りをして(必要ならば)、自分の思う番手を使えばいいのである。 遠くであれば、何番を使ったか分からないし...。

 ミドルアイアンでグリーンを狙う場面になったとき、「乗せよう」と思う心は大切である。 ただ、「乗せるには思いっきり振らなければ」と思ってはいけない。 アドレスで力を抜こう。 クラブをスリーコーターでゆっくり止める気分のトップから、鋭く振りぬこう。 そしてボールはとにかくピン方向へ。 ミドルアイアンの好ショットから、ゴルフ全体が引き締まってくる。 こんなことができるようになれば、あなたの優勝も間近である。


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